【熊取町】織の花|人生の転機を乗り越え、珈琲の世界へ。元テレビマンが紡ぐ、鮮度にこだわる夫婦の物語

2026年2月11日、熊取町大久保中に新しいカフェ『焙煎と珈琲 織の花。AND CACAO』がオープンした。SNSで話題のこのお店、一体どんな場所なのだろうか。取材前に少し調べてみたところ、そこには単に「美味しいコーヒーが飲める」という言葉だけでは説明できない、深く、そして心温まる物語が隠されていることに気づいた。

本記事は、特定のお店を宣伝する目的で書かれたものではない。一人の客として、そして一人の書き手として、その魅力的な物語に惹かれ、もっと多くの人に知ってほしいという想いで書いている。

人生の転機から、珈琲の世界へ

「織の花」の物語は、店主の森田加奈子氏が、テレビ局のディレクターとして多忙な日々を送っていた中で、自身のキャリアを見つめ直したことから始まったという。連日連夜の激務の中、心身のバランスを崩してしまった加奈子氏。その療養期間中に偶然出会ったのが、「鮮度にこだわった珈琲を提供するお店の焙煎教室」だったそうだ 。

そこで味わった煎りたての珈琲は、これまで仕事中に飲んでいたものとは全くの別物だったという。「驚くほど身体にすっとなじみ、心に深く残る」その一杯に衝撃を受け、「新鮮な珈琲の鮮度が身体への影響を大きく左右する」という事実に気づかされた。この感動が、「この美味しさと身体への優しさを、今度は自分の手で届けたい」という情熱に火をつけたと語られている 。

この経験は、「暮らしを大切にしたい」「今この一杯を味わう時間を、ちゃんと味わいたい」という新たな価値観をもたらしたようだ。テレビ局を退職し、夫・真佐男氏と共に、全くの未経験から珈琲の世界へ。2019年、本格的な焙煎機を搭載した日本でも珍しい移動焙煎車で、「織の花。」としての第一歩を踏み出した。

哲学としての「鮮度」

「織の花」が最も大切にしている哲学、それは「鮮度」だという。その根底には、珈琲豆は生鮮食品である、という信念があるようだ。

一般的に流通する珈琲豆の多くは、焙煎から1ヶ月以上経過しているものが少なくないと言われる。しかし、豆が持つ本来の豊かな風味と香りが最高潮に達するのは、焙煎後わずか1ヶ月。それを過ぎると酸化が進み、味が落ちるだけでなく、人によっては胸焼けの原因にもなるという 。

この「最高の状態」を届けるため、「織の花」では毎日飲む分だけを少量ずつ丁寧に焙煎するスタイルを徹底している。すべての商品に焙煎日を明記し、排出されたガスだけを外に出し外気を遮断する特殊な袋で包装するなど、鮮度保持へのこだわりは、徹底しているように見受けられる。「何杯飲んでも胸焼けしない珈琲」は、自らの体験に基づいた、身体への優しさの証なのだろう。

珈琲焙煎士が作る、ビーントゥバーチョコレート

珈琲豆の焙煎で培った技術と情熱は、カカオ豆へと注がれている。南大阪では初となる「ビーントゥバーチョコレート」の製造だ。

ビーントゥバー(Bean to Bar)とは、カカオ豆(Bean)の選定から焙煎、粉砕、成型を経て、板チョコレート(Bar)になるまでの全工程を自社工房で一貫して行う製法を指す。珈琲豆と同じように、カカオ豆も産地や焙煎方法によって風味が大きく変わる。その個性を最大限に引き出すため、植物油や香料などの添加物は一切使用しないというこだわりようだ 。

濃厚で力強いのに、まろやかな後味が残る自家焙煎のカカオ。その香りと風味に負けない、焙煎したてのフレッシュな珈琲。この二つを一緒に味わうことで完成する「マリアージュ」は、「織の花」でしか体験できない、至高のペアリング体験と言えるだろう。

熊取町への想いを「織る」

屋号である「織の花。」には、加奈子氏が生まれ育った熊取町への深い愛情が込められているという。かつてこの町は織物産業で栄え、子どもの頃にはいつもどこかから織機の音が聞こえていたそうだ。しかし、時代の流れと共にその音は消えていった。

織物が、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が交差することで美しい柄や生地を生み出すように、自分たちの珈琲も、人と人、人と地域を繋ぐ存在になりたい。そして、かつての織物の産地である熊取に、もう一度、彩り豊かな「花」を咲かせたい。そんな願いが、この名前に託されている 。

その想いは、地域に根差した活動にも表れている。例えば、同じ熊取町で素材を活かしたアイスクリームを提供する「wood village」とは、「織の花」のガーナ産ビーントゥバーチョコレートを使ったコラボアイスを開発。また、町のワイナリー「川岸商店」や、ガレット店「Galette and Bar On」といった、志を同じくする事業者からも熱い応援メッセージが寄せられている。さらに、熊取町のふるさと納税返礼品として商品を提供することも、地域への貢献の一つの形だ。

熊取カフェ「織の花」の実店舗空間とメニュー

2026年2月、クラウドファンディングで430人以上から400万円を超える支援を集め、ついに実店舗がオープンした。白を基調としたナチュラルで温かみのある店内は、単なるカフェではないようだ。地元アーティストの作品を展示するギャラリースペースを設け、子育て中の方や仕事に疲れた方がふっと立ち寄れる「小さな余白」のような居場所を目指しているという 。

メニューは、厳選された珈琲豆で淹れるハンドドリップコーヒーや、自家製ビーントゥバーチョコレートを使った生ガトーショコラ、タルトケーキといったスイーツが中心。さらに、モーニングセットや、スパイスの香りが食欲をそそるカレーなどの軽食ランチも提供される。

私が訪れた日は大盛況で、残念ながらゆっくりとメニューを吟味することは叶わなかったが、多くの客が珈琲と共にケーキやチョコレートを楽しみ、笑顔で語らう姿が印象的だった。一杯のテイクアウトカップにも、彼らの世界観が凝縮されているように感じられた。
この日味わえなかったメニューの数々は、次回の楽しみとして心に残しておくことにする。この物語の続きは、また改めてお届けしたい。

熊取カフェ「織の花」のロゴが入ったテイクアウトカップ

なお、実店舗オープン直後の実食レポートは、こちらの記事でもお伝えしている。

今後の展開

実店舗という拠点を構えた「織の花」だが、その活動は留まることを知らないようだ。これまでファンを増やしてきたキッチンカーでのイベント出店は、今後も継続していくという。また、好評を博している熊取図書館でのカフェ営業も、本のある生活と身体に優しいコーヒーを組み合わせた空間として、引き続き提供していく予定とのことだ 。

オンラインショップも拡充し、煎りたて新鮮な珈琲とチョコレートを全国へ届ける体制を強化。キッチンカーの機動力と実店舗の求心力、そしてオンラインの拡散力。この3つの軸を武器に、「織の花」の物語は、さらに多くの人々を巻き込みながら広がっていくのだろう。

店舗情報とアクセス

店名焙煎と珈琲 織の花。AND CACAO
住所大阪府泉南郡熊取町大久保中1-7-38
営業時間11:00~18:00
定休日不定休(公式Instagramで要確認)
席数約10席
駐車場
Instagram@orinohana_coffee
オンラインショップhttps://orinohana.thebase.in/

ぜひ一度、「織の花。」を訪れてみてほしい。煎りたての珈琲とビーントゥバーチョコレートが織りなす、奥深い世界。その一杯をゆっくりと味わう時間は、きっとあなたの日常に、ささやかで、しかし確かな彩りを添えてくれるだろう。遠方の方は、オンラインショップでもその感動を体験できる。最新情報は、公式Instagramでチェックしてみてほしい。

参考文献

[1] 焙煎と珈琲 織の花。, “熊取に煎りたて珈琲とチョコを届ける実店舗オープンへ 織の花。応援プロジェクト”, CAMPFIRE, 2025. [Online]. Available:

[2] 焙煎と珈琲 織の花 。, “【送料無料 煎りたて豆定期便】はじめています。”, BASE. [Online]. Available:

[3] 焙煎と珈琲 織の花 。, Instagram. [Online]. Available:

コメント

タイトルとURLをコピーしました